後から書いているので、新潟(中越)での地震の話題から。
NTCの練習後、18:30の開演に向けて錦糸町へ電車で移動。移動中に大きな地震があったとのメールが入る。電車じゃあ、さすがにわからない。
開演し客電が消え、まさに奏者が出てくる瞬間に大きな揺れが。天井の吊りマイクも大きく揺れている。いったん客電が戻される。様子を見て、客電が消え奏者が出てきてコンサートが始まった。
演奏が始まってすぐにも、さっきよりは小さい揺れがあった。余震だろうが、奏者にはわからないかもと思った。オーストリアには地震ないだろうから、びっくりだろう。
演奏会後に、新潟方面で大きな被害が出ていることを知る。東京でも結構揺れたからなぁ。その後の食事に行ったD連でTVを見て、予想以上の被害にびっくり。
メンバーはウィーン・フィル率は減ったものの、相変わらずのアンサンブル力は堪能した。編曲の都合で部分的に超絶技巧も出てくるのだが、それらもすべてアンサンブルのために存在しているかのごとく、自然に吹いている(時には誤魔化しているとも言う)。曲によっていろいろ配置を変えていたが、だいたい上手端にいるバウスフィールドが音楽の流れを仕切っていた。トランペットのトップがやる団体が多いので新鮮であった。(スライド動かせば見やすいというのもあるか)
トランペットのトップは、新鋭のダヴィット・ゲリエが参加していた。キツイHigh-toneも自然に鳴らしてがんばっていた。たまに出てくるオイシイところはガンシュ先生に持って行かれていた。販売プログラムを買わないと、奏者プロフィールはおろか曲名すらわからないのがイマイチで、かえってから調べてみた。ゲリエは(以前見たときは違うカタカナ表記だった気もするが)先のミュンヘン国際コンクールのトランペットで1位になったのだが、もともとホルン奏者?現在はフランスのオケでホルン奏者になるとか。あんなにトランペット吹けるのに…。
ホルンの2人はいつものウィーン・フィルと同じように、ぶりぶり吹いていた。安定していたし。
打楽器のミッターマイヤーがなかなかの芸達者で、見た目にも楽しませてもらった。(バウスフィールドの喋りによる紹介では、ヘビメタ好きとか言われてたが)
さて、アンサンブル力は十分に堪能したものの、編曲と音色はあまり楽しめなかった。音色に関しては、バウスフィールドにしても若者にしても、よく吹いて(というかとても吹けていた)機能的なのだが、音色にコクが足りなく残念。バウスフィールドのウィーン・フィルでの時は、(特に難しい曲ほど)その機能性がプラスになっているのだが、このアンサンブルではそうもいかなかった。
曲目も、記憶と調べたものから。
- モーツァルト:歌劇「魔笛」より
- 序曲
- 私は鳥刺し
- 復讐の炎は地獄の胸に燃え(夜の女王のアリア)
- 第2幕への前奏曲
- イシスとオリシスの神よ(ザラストロのアリア)
- パパゲーナとパパゲーノの二重唱
- バッハ:3つのコラール
- 主よ人の望みの喜びよ
- 目覚めよと呼ぶ声あり
- 我は汝に呼びかけん、主イエス・キリストよ
- マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
- ビゼー:歌劇「カルメン」より
- アラゴネーズ
- アルカラの竜騎兵
- ハバネラ
- 衛兵の交代
- ジプシーの踊り
- 休憩
- E.クレスポ:ブラスの魂
- S.ペリグリ:KOMA(このツァーで初演?)
- コスマ:枯葉
- J.ウィリアムス:映画「スターウォーズ」より
- フラッグ・パレード(エピソードT)
- 運命の戦い(エピソードT)
- 愛のテーマ(エピソードU)
- オージーの大楽隊(エピソードT)
- モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」より序曲(アンコール)
ウィーン・ブラス・アンサンブル
- Trp.ダヴィット・ゲリエ
- Trp.ハンス・ガンシュ
- Trp.ライナー・キューブルべック
- Trp.ラインハルト・アンブロス
- Hrn.ヴォルフガング・トムベック
- Hrn.トーマス・イェプストゥル
- Trb.イアン・バウスフィールド
- Trb.マーク・ガール
- B.Trb.ハンス・シュトレッカー
- Tub.パウル・ハルヴァックス
- Per.アントン・ミッターマイヤー
魔笛は、普段ウィーンで演奏されているおなじみの音楽の流れを、そのままこの編成で演奏しているもの。序曲などは、それをこなせるだけでもすごいことだと思う。ただ、自分にはそういうモーツァルトでは刺激が足りない。序曲など、こういう曲をやるとPicc.Trp.にはかなり無理がかかるのだが、ゲリエはそういう音域でも自然に吹いていた。ああいう音で吹いてもらうと、ほんとに必要なので書いたと感じてもらえるだろう。
序曲が終わったら拍手をしたのだが、まばら。どうやら販売プログラムには組曲のような書き方をしてあるらしい。でも魔笛なら、序曲が終わって拍手でいいと思うが。以降おとなしくしていたら、さすがに夜の女王のアリアのあとには、またまばらに拍手。どうにも中途半端な反応になっている。
その夜の女王のアリアはPicc2本で応戦。High-Fを含むコロラトゥーラは1回目と2回目で交代して吹いていた。
第2幕への前奏曲やザラストロのアリアはトロンボーン・アンサンブルでもおなじみの曲。ザラストロのアリアは、まあ原曲がああなので限られてくるが、トロンボーンでは有名なあの曲集の伴奏3本を、ちょこっと拡大しただけに聴こえた。
なお、この魔笛はよくある並び方(下手からTrp.x3/Hrn.x2/Tub./B.Trb./Trb.x2)だったが、バッハはいろいろ変えていた。
主よ人の望みの喜びよは、あのようなゆっくりの演奏はきれいではあるが、退屈でもたない。並びは下手からB.Trb,Trb.Trb.Trp./Trp.ガンシュ(picc持替)/Tub.Hrn.Hrn.Trp.Trp.となっており、下手の4声がコラール担当。上手がオブリガート。ガンシュは両方の補助的な感じか。piccは一瞬だけ。
目覚めよと呼ぶ声ありは、後半大音量でとても目覚める演奏だった。
我は汝に呼びかけん、主イエス・キリストよも金管でよく演奏される曲。この曲はゆっくりなまとめ方でも、まださまになる。やはり後半は大音量。並びは、下手からTrp.Trp.Trp./Trb.Trb.B.Trb.Tub./Hrn.Hrn.Flg.という、ジャーマン・ブラスでよくある配置。というかジャーマン・ブラスの譜面かな?
カヴァレリア・ルスティカーナは高めに移調された編曲(Ges-durなのかB-durなのか)。この曲に関しては、普段ウィーン・フィールでもっといろいろやっていると思うのだが(もちろん皆降り番だけど)、あっさり流れた。
カルメンはよくあるロンドン・ブラスの譜面に限りなく近い(笑)譜面だった。もちろんHrn.1+Trb.4はHrn.2+Trb.3になっていたが。そのため、原調から1音低い(ロンドンブラスはCD録音は原調でやっているのがずるい)。ロンドン・ブラスの譜面は吹いたことはないが、いろいろ研究して細かいところまで知っているので、いろいろ楽しめた。他の編曲なかったのだろうか。
後半は楽しい曲にしてあるのだろうが、私は知らない曲が多い。(プログラムが無いと始まってもわからない)
枯葉はおなじみのバウスフィールドのソロにて。このバウスフィールドの十八番は、(おそらく)初来日の時のリサイタル以来、何度も聴いている気がする。いつものように、すばらしく終了。
スターウォーズは実はよく知らないので省略。シュトレッカーが楽しそうにたくさん吹いていたのがよかった。
アンコールがフィガロの結婚序曲。一時期演奏予定プログラムに入っていたこともあったので、予想がついていた。魔笛同様、トロンボーンも16分音符に参戦していた。
客席にはかなり空席が目立った。ただ、聴き終わった感想としては、主対象の客層としては難しいので、売る方も大変かも。(そっちに行ったわけではないだろうが、同日はN響の演奏会で、アシュケナージが手に指揮棒を刺してしまった?らしい)
ばりばりのブラス少年少女にしてみれば、ウィーンにはさほど興味はないだろう。(少しは学生の団体がいたが)。若者であふれかえるトロンボーン・クァルテット・ジパングとは大違いだ。
また、音色や使用楽器にこだわる、コアな金管ファンにも、結果として(あるいは参加メンバーでわかってしまうのか)あまり興味を引くサウンドではなかったかも。
強いて挙げるとすれば、室内楽好きな人なら(金管でなくとも)とても楽しめるかもしれない。
演奏会の後は、錦糸町おなじみのD連にて夕食。いつものように、おいしくおなかいっぱい、でも安い。