忙しくてちっとも更新していなかったが、忘れないためにも最近印象に残ったものを。まずは、4/1にBayern4にて放送された演奏会。
- ラウタヴァーラ:極北の歌(Cantus Arcticus)〜鳥の声とオーケストラのための協奏曲作品61(1972)
- チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
- (アンコール) ココリアーノ:“Red Violin”の音楽から
- シベリウス:交響詩「大洋の女神(Aallottaret)」作品73 (1914)
- シベリウス:交響曲第7番ハ長調 作品105 (1924)
[2005-03-12, Philharmonie, Münchner Gasteig]
- ミュンヘン・フィル (Münchner Philharmoniker)
- 指揮:オスモ・ヴァンスカ (Osmo Vänskä)
- ヴァイオリン:ジョシュア・ベル (Joshua Bell)
ヴァンスカはミネソタ管との共演がよく米国の放送局で流れるが、ドイツのは珍しいしシベリウスを中心としたプログラムも興味深いので聴いた。これでビットレートが高い局なら、なお良いのだが…。
1曲目のラウタヴァーラにはまってしまった。録音による鳥の声とオケの共演。出やバランスが細かく指示されているらしく、バランスが絶妙。鳥の声といっても、レスピーギやメシアンのような“さえずり”系ではなく、北の渡り鳥系の鳴き声。特に3曲目の白鳥の声は懐かしさを感じる。曲の出だしは、モルダウみたいな2Fl.でのうねうね。わりと淡々と進み、時には鳥の声だけの部分も。最後に少しだけクライマックスがあるが、全体は聴きやすい平穏な曲想といえるのでは。最後のクライマックスの主題がとくに耳に残った(*1)。
ラウタヴァーラは名前は耳にするものの、あまり聴く機会がなかった。2月の頭にMusiq3で放送された、ミッコ・フランク/ベルギー国立管の演奏会で冒頭に演奏された“我らの時代のレクイエム”(A Requiem in Our Time)でちょうど興味を持ち始めたところ。今回の演奏を聴いてからググったら、読響&ヴァンスカでのCantus Arcticusがテレビで放送されたばかりだったらしい。惜しい。A Requiem in Our Timeは金管アンサンブル+打楽器という編成で興味をひいたのもあったが、Cantus Arcticusも聴いたところ、自分にとっては心に響いてくる作曲家(*3)なのかもしれないと感じ始めた。Requiemのきつめの音響も、Cantusの響きもどちらもいい。他の曲も聴いてみないと。
昨夜(4/6)にアヌ・タリ&ノルディック交響楽団?(Pöhjamaade Sümfooniaorkester)の演奏会がKlassikaRaadio(エストニア放送)で放送されてたが、このオープニングもCantus Arcticus。こちらも楽しみだ。(まだ聴いていない)
さて、ミュンヘン・フィルの演奏会に戻るが、シベリウスはもうヴァンスカお手の物。特に交響曲第7番は、確信に満ちた演奏。最後のクライマックスの少し前で、Trp.の上のGを強調していたのが印象的。なお、ヴァンスカの指揮はすばらしかったのだが、ドイツの放送局のため“ベン助”と読まれていた(*2)のが日本人的には脱力。
もう一つは、4/4にSR-P2(*4)にて生中継された演奏会。
- ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調作品21
- モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番変ホ長調KV271「ジュノーム」
- L.チジク:モーツァルトの主題による幻想的変奏曲
[2005-04-04, Kongresshalle, Saarbrücken]
- ザールラント州立管弦楽団
- 指揮:アリエル・ズーカーマン
- ピアノ:レオニード・チジク
- ヴァイオリン:ヴォルフガング・メルテス
最初は正統的なベートーヴェンとモーツァルト。最新の奏法とまでは行かないものの、なかなかきびきびした演奏で楽しめた。
残りがソリストの自作曲、モーツァルトの主題による幻想的変奏曲。主題は“トルコ行進曲付き”で知られるKV331のソナタの第1楽章(*5)。レーガーが管弦楽のための変奏曲とフーガに使用していたのと同じ主題。このチジクはジャズ畑では有名な方らしく、最初はかわいらしくモーツァルトで始まったが、そのうちジャズになっている。ソロがピアノだけでなくヴァイオリンにもある。伴奏は弦楽合奏とリズム隊でわりと小編成。モーツァルトとジャズを行き来するあたりはF.グルダを思い出した。ピアノとヴァイオリンのソロだけの部分もありこのあたりはジャズ・ヴァイオリンのノリが必須。なかなか楽しめた。
調べてみると、この曲はクレーメル達がとりあげて知られているのですね。もちろんチジクのソロで。
他にも、復活祭時期のマタイ受難曲をはじめとする各種宗教曲、4/2のアンデルセン生誕200年に合わせた北欧各局の特番などが印象に残った。
*1 トランペットなどでHigh-Cの周辺を回る旋律。低音質の中継ながら、奏者の音色がいいのもわかる。。
*2 aウムラウトなので。予想はしていたが。
*3 そうでない作品はつまらないという訳ではない。ただほとんどの作品が自分に合っていると感じる作曲家が何人かいる。他にはシベリウス、ボロディン、ムソルグスキー、シューベルト、バッハ、ビーバーとか。
*4 私が聴いたSR-P2はスウェーデン放送。ザールブリュッケン(ドイツ)の地元局は、似た略称のSR2(ザールラント放送)で、当然こちらでも生中継していた。
*5 第1楽章なので、トルコ行進曲ではない。
【4/8追記分】 レオニード・チジクのモーツァルトはカデンツァ自作でとても面白かった。つなげるのは強引にならざるを得ないけど。
アヌ・タリ&ノルディック交響楽団のCantusは思ったよりオケが上手かった。こちらの局のが高音質なので聴きやすいのもいい。ただ、Trp.の主題は予想通り、途中で果ててしまった。というか、これが普通なのだろう。ミュンヘン・フィルがばてなかったのは、ブレスを沢山とったから。そんなにフレーズ切っていいの?ってくらいブレスしていた。