「おかか1968」 ダイアリーにてジャニーヌ・ ヤンセンの「四季」のディスクのレビューがあったのを見て、以前放送されたライヴを聴き直した。 昨年末2004年12月26日にRADIO4-NEDにて生中継されたもの。
- J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043
- ヴィヴァルディ:「和声と創意への試み」作品8より協奏曲第1番〜4番“四季”
- Vn.ジャニーヌ・ヤンセン, ジュリアン・ラクリン他
[2004-12-26, コンセルトヘボウ, アムステルダム]
メンバーの詳細は不明ですが、CD録音とほぼ同一でしょうか。 通奏低音にはチェンバロorオルガンの他にテオルボも加わっているあたりとかも。バッハのソロの2番はジュリアン・ ラクリンと紹介されていました。四季ではヴィオラに持ち替えた可能性はありますが。
バッハは、思ったほど極端にピリオド奏法を意識しているわけではない。それでも、短い音はより短く、時には意外なテヌートを入れる、 という現在では常套手段である表現でしっかり演奏している。第2楽章は過度に甘美にならないように注意しながらも、艶は残している。
ヴィヴァルディは、特に通奏低音がとてもあたりまえに古楽的アプローチなので、安心して聴ける。 (チェンバロとオルガンの使い分けとか、オルガンののばしにテオルボの和音を強調したりとか)。もともと、古楽団他でなくとも、 なぜかこの曲だけは工夫を凝らす人が多いので、特に驚きはしないが、音色の使い分けなど堪能できた。 春の第1楽章の主題でフレーズの終わりを短めに抜く辺りなど古楽的。 夏の終楽章(Gの同音刻み)はとっても早く始まったので(そこいらへんのピリオド団体顔負け)期待したが、 音階になったらややテンポが落ちたので、ちょっと速すぎただけなのかも。
「坂本くん」様の感想にもあるように、知らないで聴いたら古楽団体と思えなくもない、というのはその通りだと思う。 WebRadioで圧縮レート低めだと、弦楽器の高音部はモダン楽器でも古楽器のように聞こえるのでなおさら。
もともとジャニーヌ・ヤンセンに興味を持ったのは、ヴィジュアル系のプロモーションではなく(笑)、昨年後半にアムステルダム・ コンセルトヘボウで次々と良い演奏をしたのが印象に残ったからです(タイミングを逃し、このblogに感想を載せていませんが)。 その多くがRADIO4-NEDにて中継されたので聴けました。もちろんRADIO4-NEDのサイトでのコンサート・ アジェンダにて美麗な容姿であることは知っておりましたが(笑)。その上で、この技術と表現力があるので将来が楽しみだと。 今日(こんにち)の演奏家としては、もはや当然ともいえる、 曲の様式感(古い曲であれば適切なピリオド奏法的な表現もとりいれつつ)をしっかり出すことも、あたりまえのようにできていますし。
なお、上記の四季の他に放送を聴いたRADIO4-NEDの演奏会中継は以下の2つです。
2004年12月4日に生中継されたもの。
- ハルトマン:ミゼレーレ
- ブリテン:ヴァイオリン協奏曲
- ターネイジ:とだえぬ悲しみ(オランダ初演)
- ストラヴィンスキー:3楽章の交響曲
- ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
- ジョナサン・ノット指揮
- Vn.ジャニーヌ・ヤンセン
[2004-12-04, コンセルトヘボウ, アムステルダム]
2004年12月19日に放送されたもの。
- コダーイ:マロシュセーク舞曲
- プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番作品63
- バルトーク:舞踏組曲Sz.77
- ストラヴィンスキー:タンゴ
- ラヴェル:ラ・ヴァルス
- ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
- イヴァン・フィッシャー指揮
- Vn.ジャニーヌ・ヤンセン
[2004-12-12, コンセルトヘボウ, アムステルダム]
12月のひとつきでこれだけ集中的に好演を聴いたら、そりゃ印象に残りますって。協奏曲以外に、 双方のプログラミングも興味深いですね。
ノットの演奏会は20〜21世紀の印象深い作品。大好きだが、 なかなかレパートリーにならないブリテンが採りあげられているのもうれしい(伴奏できちんとTrb.が活躍するVn.協奏曲は、 どうしてもマイナーなものに多い)。終楽章のパッサカリアも、前後のハルトマンやターネイジにより、より引き立っている気がした。
I.フィッシャーの演奏会は“舞曲”がテーマでしょうかね。プロコフィエフの2番も、 終楽章はカスタネットや大太鼓を伴う舞曲風の曲想だし。この曲のジャニーヌ・ヤンセンは、プロコフィエフに必要なメカニカルな動きよりかは、 やや情感的な表現を重視しているように聴こえる。この辺りのせいか、たとえば庄司紗矢香が弾いたときとは、 だいぶ異なる印象を受けた(もちろん両方とも、適切な表現だと思うし、ヤンセンがテクニック的に不足しているわけでもない)
そういえば、先日のN響との共演の生中継は聴いてなかった。アシュケナージのグレートなぞつまらなそうで興味がなかったら、 チェックを怠ってしまった。各所のレビューによると、メンデルスゾーンのロマンチックな表現と、 アンコールでのバッハの様式感の差が意外だったとのこと。
[2/15追記] 山尾好奇堂さんでもジャニーヌ・ヤンセンの「四季」として書かれていましたね。 気が付いていなかったが、チェロは兄上でチェンバロは父上ですか。この演奏での通奏低音がピリオド的アプローチの説得力を増しているのですが、なかなか心強いサポートですね。